何気なく入った飲食店で、ある女性の個展をお知らせするはがきを受け取った。
そのギャラリーが、会社の近くだったので、
2日後のお昼休み、ランチを買いに行く途中で、ギャラリーに立ち寄った。
そのレトロなビルは、以前から入ってみたい!と思っていたので、
正当な理由により、足を踏み入れることができて、嬉しかった。
ギャラリーは2階の真中の、こじんまりした一室にあった。
部屋の真中に、彼女が作った作品がデデーンと鎮座。
固い糸を蚊帳のように織りこんでいる、2.5mはあろうかというオブジェ。
羊の毛(しかもリアル)や、木や、なんか、色んなものが、
もわもわ織り込んである。中に入れるらしい。
自然の声を織ったというその作品は、大きさに圧倒されつつも、
言いようのない安らぎと、驚きを与えてくれた。
部屋には、作者であるハヤシさんという、大学卒業後1年の若い女性と、
もう少し大人の女性と、芸術家風のおじさん(先生と呼ばれていた)がいた。
そして、勤め人の私の計4人しかいない。
サッと入って、パッと出る、というドライな鑑賞のできる空気はなく、
お茶を進められたこともあり、ハヤシさんとしばし会話をすることになった。
しかし、私は、そこでハヤシさんと相当会話を交わしてしまった。
子供のころから工作や何かを作ることが好きだったこと、
なぜ芸術を目指すようになったのか、
お金のために何かを作るのはいやで、作るために生活をしたいこと、
今後の展望、制作の方向性での少しの迷い、
といったハヤシさん自身のことや。
羊の毛の入手先、木は近所から拾ってきたこと、
機織は自宅にあり、こつこつ織っていたこと、
といった作品に関することや。
アイデアは普段思いついたら書き留めておくこと、
何かを表現していないとだめ、といった
芸術家としてのハヤシさんに関する事。
などなど、それだけで記事がかけそうなくらい
豊富に色々聞いてしまい、ハヤシさんは、聞いた以上に
たくさん答えてくれた。素直で、おだやかな、素敵な女性であった。
私は、人にとても興味があるので、どうして?と思うと、
聞きたくなってしまう。大抵の人は、喜んで答えてくださる。
ハヤシさんの場合は、とてもすらすら答えてくださった。
彼女の感性は、とてもピュアなのだと、思った。
普通の勤め人の私にはない、その感性と表現力をとてもいいなと思った。
朝から仕事に追われていたので、昼休み、素敵な作品に出遭えて、
私のこころも洗われ、お昼からの仕事もはかどった。
私は、ハヤシさんと、ハヤシさんの作品からエネルギーと、リフレッシュと、
刺激をもらい、幸せな気持ちになった。